手紙の書き出し》時候の挨拶・頭語と結語、手紙の構成

手紙の構成と書き出し
  手紙の書き出しについて解説します。
 使いやすい一般的な手紙の書き出しをはじめ、お店・店舗が休業中で、お目にかかれないお客様への挨拶状、家族が闘病中の方へのお見舞い状、友人または友人のご家族が亡くなった場合のお悔やみ状、災害によりイベントが中止になった場合のお詫び状、目上の相手やお客様あてにも使える丁寧な手紙の書き出しなど、具体的なケースについて、手紙の書き出しの例文・文例を紹介します。
 合わせて手紙の構成、頭語と結語、時候の挨拶なども解説します。

1.手紙の書き出しとは(手紙の構成)

手紙の良さは「緊急時の連絡手段ではないこと」でしょう。だからこそ、相手の暮らしを邪魔せずに、気持ちに寄り添うことができます。
特に「簡単に会えない相手」に送ってこそ、手紙の良さが活きるのではないでしょうか。
近況連絡、お礼状、挨拶状、お見舞い状であっても基本的なマナーは同じです。相手の安否を気づかう気持ちや、変わらぬ親交をお願いする言葉などを入れます。
ご紹介している内容は手紙でもハガキでも通用しますので構成だけはひととおり理解しておきましょう。

手紙の書き出しのポイントとコツ

[ポイント]
手紙の場合には、まず時候の挨拶(季節の挨拶)や相手の健康を気遣う言葉から書き始めます。お詫び状やお悔やみ状では、時候の挨拶を書かずに本題に入ります。
1.相手をよく考える
・手紙を出す相手とあなたとの関係を考えます。
親しい相手なのか、目上の相手なのか、ビジネスの相手なのかを良く考えて書きます。
2.先方の状況をおしはかる

・現在の相手の状況を考えてみます。
例えば、幸せ、元気、健康、闘病中、超多忙、活躍している、暇を持て余している、大変な困難に遭遇している、寂しい、不安、など。

・例えばもし先方が闘病中の場合には、症状によっては手紙のやり取りが難しい場合があります。そのような場合には手紙は避けたり、あるいは家族に預けたりすることもあります。
 病気以外の状況でも、相手への連絡手段として手紙がふさわしくない場合にはメールや電話を使うようにしましょう。

3.季節を考える
・季節についてふれるのが手紙の書き出しの慣例となっています。時候の挨拶(季節の挨拶)などを書きます。
(ただし、相手や相手の家族が困難な状況にあることがわかっている場合には、「お見舞い状」の書き方のように、時候の挨拶を省略して、いきなり本題に入ることもあります)

手紙の書き出しと構成

下記が手紙の構成となります。冒頭には頭語や、時候の挨拶を書きます。

1. 頭語(とうご)

手紙の書き方

・頭語とは、手紙を書く時に冒頭に用いられる言葉をさします。
例えば「拝啓」「拝復」「謹啓」「前略」など。

・頭語は、 必ず、決まった結語とペアになっています。例えば「拝啓」で書きはじめる場合は結語「敬具」で結ぶのが決まりです。
代表的な頭語と結語のペアには以下のようなものがあります。

・頭語を用いるのが手紙の正式なマナーですが、文章が堅苦しくなるので、親しい相手や子どもにあてた手紙の場合などには、省略しても構いません。

「頭語」と「結語」の代表的なペアの例

頭語頭語の意味・
挨拶文としての意味など

結語結語の意味・
挨拶文としての意味など
一般的な手紙の頭語と結語、意味は?
拝啓謹んで申し上げます敬具謹んで申し上げました
丁寧な手紙、目上の相手あての手紙の頭語と結語、意味は?
謹啓謹んで申し上げます
(拝啓よりも敬意が高い)
敬白
または謹言
謹んで申し上げました
(敬意が強いので、目上の人あての手紙や、お礼状などに用いると良い)
略式の手紙の頭語と結語、意味は?
前略冒頭の時候の挨拶を省きます草々急ぎ走り書きをし、申し訳ありません。
このほかに「頭語」「結語」のペアはこちらのページ>>>
手紙の書き出し つづき

2. 時候の挨拶 (じこうのあいさつ)

冒頭に「頭語」を書き、続いて自分の言葉で季節感を述べます。これを「時候の挨拶」と言います。
頭語のあと一文字あけて続けて書くか、または改行して次の行の上一文字下げて書きます。

時候の挨拶の例 ( 下記を参考に、時候の挨拶は自分の言葉で)

1月厳寒の侯
お正月気分も抜けてますます寒さが厳しくなってきました。
松もとれましたが、あいかわらず寒い日が続いています。
2月余寒の侯
立春とは名ばかりでまだまだ寒い日が続いております
節分を過ぎましたのに、あいかわらず寒い日が続いています。
3月早春の侯
桃の節句を過ぎ、ようやく春めいて参りました。
寒さの中に春の気配を感じる頃となりました。
4月陽春の侯
桜の花のたよりが聞かれる頃になりました。
花の色が美しい季節になりました。
5月新緑の侯
鯉のぼりが気持ちよさそうに泳いでいます。
新緑の香りがすがすがしい季節になりました。
6月梅雨の侯
梅雨に入り、うっとうしい毎日が続いています。
あじさいの色が美しく映えるころとなりました。
7月盛夏の侯
暑中お見舞い申し上げます。
降りしきる蝉の声に夏の盛りを感じるころになりました。
8月残暑の侯
立秋とは名ばかりの厳しい暑さが続いています。
土用あけの暑さひとしおの侯
9月初秋の侯
コスモスが風に揺れ、朝夕はしのぎやすくなって参りました。
燈火親しむ頃となりました。
10月秋冷の侯
菊の花が香る季節となりました。
さわやかな秋晴れの日が続いております
11月晩秋の侯
朝晩はめっきり寒くなって参りました。
庭の草木も日ごとに色づいて参りました。
12月初冬の侯
今年もおしつまって参りました。
師走に入り、あわただしい毎日が続いております。
時候の挨拶についてはこちらのページでもっと詳しく説明しています。>>>

※俳句の季語についてはこちらのページでご紹介しています。>>>

2.手紙の書き出し例文

手紙の書き出しの例文をケース別にご紹介します。解説と合わせてご覧ください。

(2-1)一般的な手紙の書き出し

拝啓 今年も鯉のぼりの季節になりました。お元気でお過ごしでしょうか。
一般的な手紙の書き出しです。頭語のあと時候の挨拶を書きます。

拝啓 新緑の候 お変わりありませんか?そろそろ元気を持て余している頃かと思いお便りしました。
親しい相手あての文例です。先方の気持ちを盛り上げるため、明るい言葉を使っています。
年下の相手あての手紙にも使えます。
このあとに続く本文には楽しい誘いを紹介したり、わくわくするような招待やプランを紹介したり、自分の楽しい経験を語るのも良いでしょう。

(2-2)災害等被害等で店舗が休業中で、お目にかかれないお客様への挨拶状 の書き出し

謹啓 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。また、お客様におかれましてはこの度の豪雨災害で、生活に多大な影響を受けられている由、心よりお見舞いを申し上げます。
災害被害のお見舞いの言葉を書き添えています。

謹啓 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。また、このたびの豪雨災害によりやむなく臨時休業のはこびとなり、お客様には多大なご迷惑、ご心配をおかけしておりますこと心よりお詫び申し上げます。

店舗が休業中であることを伝え、ご挨拶をする内容となっています。例えばこのあとにつづく本文で店舗の再開の案内をしたり、通販の案内などの掲載をすることができます。
 

(2-3)家族が闘病中の方へのお見舞い状→できればメールで

・ご家族が闘病中や入院中の場合には、一番大変な時期でもあり、また病気の内容によっては手紙のやり取りが難しい場合などがあります。手紙を書くとなると時間や手間がかかるものです。親族が入院した場合など連絡を取りたい気持ちをぐっと我慢し、どうしても連絡を取りたい場合にはメールや電話を使うようにしましょう。

・メールの場合には手紙のような書き出しは不要です。
◯◯さん、その後(ご家族・ご親族)さんのお身体の具合はいかがですか?一番心細い時期に何もできなくてごめんなさい。何か私にお手伝いできることがあれば遠慮なく連絡ください。
↑ メール文を想定しています。書き出しのヒントになさってください。

前略 (ご家族・ご親族)様・さんが退院されたと知り、ペンを取りました。
もし手紙を出す場合には退院されて(回復されて)落ち着いた頃に。
 

(2-4)友人または友人のご家族が亡くなった場合のお悔やみ状 書き出し

 ◯◯様の突然の訃報に接し、言葉を失っています。
すぐに出すお悔やみ状は、頭語、結語や時候の挨拶は不要です。

(文末の例)
 本来であればすぐにでもかけつけてお悔やみを申し上げたいところですが、(遠方のため)お伺いすることができずまことに申し訳ございません。
略儀ながら書中をもちまして御冥福をお祈り申し上げます。
弔問に伺えない場合には、「◯◯のため」といった直接的な書き方はせず、(カッコ)の中は省略したり簡潔な書き方にします。
 
・お悔やみ状の文例はこちらで詳しく説明しています>>>

(2-5)災害によりイベントが中止になった場合のお詫び状 書き出し

謹啓 皆様におかれましてはこのたびの豪雨災害により多大な影響を受けられていることと、衷心よりお見舞い申し上げます。さて、(以下略)
まずはお見舞いの言葉を述べています。

謹啓 平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼を申し上げます。またこのたびの豪雨災害に際しましては、大変なご心配ならびにご不便な思いをされておりますことと、心よりお見舞い申し上げます。さて、(以下略)
最初に平素のお礼を述べる一文を入れています。
 

(2-6)目上の相手やお客様あてにも使える丁寧な手紙の書き出し

拝啓 梅の蕾がようやくほころびはじめました。
◯◯様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。(以下略)
丁寧な手紙の書き出しです。挨拶状でも使えます。

謹啓 新緑の候 時下ますますご清祥のことと心よりお慶び申し上げます。
 さて、(以下略)
清祥(せいしょう)とは、相手が健やかに暮らしていることを表す言葉です。個人あての手紙に用いられます。

ちなみに、同じようによく使われる言葉で「ご清栄」もありますが、これは企業あてなどビジネス用の手紙で用いられます。
「ますますご清栄の段 心よりお慶び申し上げます」などと書きます。
 
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