始末書を書かせる処分に相当する不始末やミスであると判断されれば、始末書を書かせることはできます。就業規則に懲戒処分の内容を明記しておきましょう。ただし、提出を強制することはできません。
目次
1.会社は社員に始末書を書かせることができるの? |
会社・職場でミスや不始末をおかした社員に始末書を書かせることがあります。 |
(1)社員に始末書を書かせるとき、会社はどうする? |
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・始末書を書かせることは懲戒処分のひとつ 一般的な会社では就業規則で「懲戒」の内容を定めています。
参考[厚生労働省:モデル就業規則のページから抜粋(別ウインドウで開きます)] (懲戒の種類) 第67条 会社は、労働者が次条のいずれかに該当する場合は、その情状に応じ、次の区分により懲戒を行う。 ① けん責 始末書を提出させて将来を戒める。 ② 減給 始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。 ③ 出勤停止 始末書を提出させるほか、◯◯日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。 ④ 懲戒解雇 予告期間を設けることなく即時に解雇する。この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しな い。 ・懲戒の種類は、会社ごとに自由に決められる(1)懲戒処分の種類については、上記のモデル就業規則67条に掲げる処分以外にも定めることができます(上記の種類に限定する必要はありません)。 (2)もし就業規則で減給という制裁を定める場合には、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。また、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないとされています(労基法第91条)。 (3)労働者がもし遅刻や早退をした場合、その時間の分だけ減給することは可能です(労基法第91条の制限は受けません)。しかし、遅刻や早退の時間分の賃金額を超える減給は制裁とみなされ、法律違反となります(労基法第91条に定める減給の制裁に関する規定の適用を受けます)。
(4)労働者を懲戒解雇の処分にして、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支給せずに即時に解雇する場合、あらかじめ所轄労働基準監督署長に解雇予告除外認定の申請をし、その認定を受けることが必要です(労基法第20条)。労働基準監督署長の認定を受けずに即時に解雇する場合には、解雇予告手当を支給しなければなりません。 なお、どのようなミスや不始末があった場合に上記の①,②,③,④ のような懲戒処分を受けることになるのかは、就業規則に記載しておくようにします。 ちなみに、モデル就業規則では、どんなときに懲戒処分になるのかを明記しており、その記載例が下記のように68条で紹介されています。>>> |
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(2)どんな場合に社員に始末書を書かせることができるのか? |
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どのようなケースで懲戒処分を受けることになるのかは就業規則に記載しておきます。
参考[厚生労働省:モデル就業規則のページから抜粋(別ウインドウで開きます)] (懲戒の事由) 1 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。
↑ここまでが、「懲戒解雇までには至らないが制裁の対象となる」というケースを紹介した項です。 |
2.始末書の提出を強制する |
始末書を書かない社員に始末書の提出を強制することはできるのでしょうか? |
(1)社員に始末書の提出を強制できるのか? |
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・結論から言うと、社員に無理やり始末書を提出させることはできません。もちろん、始末書を書かない社員に無理やり書かせることもできません。 さらに、始末書を書かないことや提出しないことを理由にして、さらに重い懲戒処分を下すことも禁止されています。これは憲法で定められている「二重処罰の禁止」と呼ばれるもので、例えば会社側(雇用主)が、Aという処分を一度決定した場合には、その社員がAに従わないことを理由にして、更に別のBという処分を下すことはできないというものです。 したがって、「社員がどうしても始末書を書かない」という理由で、更に重い処分を下すこともできないのです。 ただし、悪質と認められる態度が繰り返されたり、注意を受けても改められなかった場合には、それに該当する別の懲戒を就業規則に定めておけば、改めて処分を下すことは可能となります。 例)下記はモデル就業規則の68条第2項で、懲戒解雇、普通解雇、減給、出勤停止の理由として紹介されています。 ④ 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。>>> |
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(2)始末書を書かない社員を処分・解雇できるのか |
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・始末書を書かないことや提出しないことを理由にして、社員を即処分したり、解雇したりすることはできません。 ただし、こうした業務上の命令・指示に従わないことが繰り返される、あるいは著しく会社の秩序を乱すなど勤務態度が悪い場合や、数回にわたり懲戒を受けたにも関わらずなお勤務態度に改善の見込みがないときには、下記の⑧ような就業規則があらかじめさだめられていれば、処分を下すことは可能です。 たとえば、数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず悪質な不始末を繰り返す社員には、始末書を書かせる際に、「もし次に同じことを繰り返した場合には就業規則に則り、相応の処分をする可能性もあります」と伝えることもできます。 参考[厚生労働省:モデル就業規則のページから抜粋(別ウインドウで開きます)] (懲戒の事由) 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第53条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。 会社や雇用主は規則や指示・命令に違反する労働者に対して は、「規則の定めるところ」により懲戒処分をなし得ます。したがって、 就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできません。 また、懲戒の事由の内容について、労基法上の制限はありません。 また、就業規則に懲戒規定を設ける前にした労働者の行為に対して、さかのぼって懲戒処分をすることや、1回の懲戒事由に該当する行為に対し複数回の懲戒処分を行うことはできません。 社員の権利を守り、職場の環境も守る…トラブル防止のためには就業規則を充実させることが重要なのです。 |
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【参考ページ】下記は別ページ | |
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▼ 反省文の書き方>>>(反省文の用紙・封筒) | |
▼ 始末書と顛末書の違い 別のページ |