献杯の挨拶の仕方は?正しいマナー・文例ほか

献杯という言葉をご存じでしょうか?相手に敬意を表して杯を差し出すことをさして献杯(けんぱい)と言います。葬儀や法事などにおいて、故人を悼み、杯を捧げる場合にも、この献杯(けんぱい)という言葉を用います(葬儀の時、および法事の時の乾杯には「献杯(けんぱい)」と言うのが慣例です)。
ここでは、献杯のやり方や、お葬式、葬儀あるいは法事で献杯の挨拶を依頼された場合に参考になるスピーチ例、文例をご紹介しています。

■1.一般的な献杯のしかた

もともと、日本では、お酒は神様への供物のうちのひとつ(お神酒=おみき)であり、収穫を祈る神事や、元服や戴冠などの儀式、結婚式の三三九度のかための杯など重要な儀式に用いられてきました。戦にのぞむ前に酌み交わしたお酒も、神聖な意味を持ち、現在の陽気な乾杯とは一線を画すものでした。当時は、酒の肴までも縁起をかつぎ、縁起の良いものが供されていました。
お葬式・葬儀での献杯は、亡くなった人を敬い、供養する気持ちを大切にする儀式ですから、西洋から伝わった乾杯とは全く異なるもので、意味合いとしてはもともと日本に昔からあった神聖な儀式に近いものです。仏教の一連の儀式には、献杯自体はありませんが、近年になって、葬儀のあとお斎を行なうときに献杯という言葉を使用し、故人にお酒を献上するようになってきました。
葬儀のあとの精進おとしや、法事のあとのお斎(おとき)の献杯の場合、献杯(挨拶と全員による唱和)が終わるまで、出席者全員が食べ物や飲み物に箸をつけることができません。そのため献杯の挨拶を依頼された場合には、挨拶は手短かに済ませます。
下記にて一般的な献杯のタイミングと献杯のしかたをご紹介します。
※献杯は、必ずしも行なわなくてはいけないというものではありません。
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葬儀・法事での献杯(葬儀の流れと献杯のタイミング)

全体の流れには決まりはありませんが、一般的な例をご紹介いたします。
献杯は、お葬式・葬儀の精進おとしのとき、および、法事のお斎(おとき)のときに行なわれます。
項目流れとタイミング
1. 葬儀・ 葬式の一連の流れと献杯のタイミング
一般的には以下のような流れで葬儀・告別式が行われます。献杯は⑯の精進落としの際に行われます。
①.受付開始
②.着席
③.開式宣言
④.僧侶入場
⑤.読経
⑥.僧侶による焼香
⑦.弔辞奉読
⑧.弔電奉読
⑨.一般参列者による焼香
⑩.閉式
   ⑪.故人との最後のお別れと出棺 につづく
葬儀・法事での献杯 つづき
項目流れとタイミング
1. 葬儀・ 葬式の一連の流れと献杯のタイミング つづき
⑪.故人との最後のお別れと出棺
 …喪主から順番に、遺族が棺に生花を入れ合掌。
 …棺に蓋をし、喪主から順番に、棺に釘打ちをする。
 …位牌、遺影、遺骨の箱、棺の順で霊柩車に向かう。
 …喪主が挨拶をする喪主挨拶の文例とマナーへ>>
 …火葬場へ同行する人は所定の車に分乗する。
 
⑫.火葬場で
 …係員に火葬許可証を渡す。
 …棺を火葬炉前に運び、読経ののち焼香。
 …焼香後、棺を炉に納め係員が点火。
 …遺体がお骨になるまで控え室で待つ。
 
⑬.骨あげ(係員の指示に従って、遺骨箱に骨を収容する)
⑭.火葬場から戻ったら
 …入口で塩と水で身を浄めて入場
 
⑮.還骨法要・還骨勤行
 …僧侶による読経ののち、焼香をする。
 …最近は、この席を「初七日」の繰り上げ法要と合わせて行なう場合がほとんどです。法要・法事のページへ>>
⑯.喪主が参列者に精進おとし(喪主による接待)の案内をする。
 …精進おとしの会食のはじめに、献杯が行なわれます。
 

法要の流れと献杯のタイミング

項目流れとタイミング
2. 法事・法要の 一連の流れと 献杯のタイミング
①.僧侶入場
②.施主の挨拶
③.僧侶の読経
④.焼香
⑤.法話
⑥.僧侶退場
⑦.墓参り…墓地が遠方の場合は省略されます
⑧.施主の挨拶
 施主が参列者にお礼とお斎(会食)の案内をする。
⑨.お斎
 …お斎の会食のはじめに、献杯が行なわれます。
3.献杯のしかた
 ※これは一般的な例です。
 献杯をしない場合もありますし、 やり方も地方や宗教によって異なります。
 葬儀社や寺社に確認して下さい
1.故人の位牌にお酒を捧げます
 (1)葬儀のあとの場合には、まずは故人のお骨、位牌、写真を正面に安置します。故人の位牌の前にお酒(杯に入れて)を捧げます。
(法事の場合には、これに準じ、位牌の前に杯を捧げます)
(2)次に、全員にお酒がゆきわたるように杯にお酒を注ぎます。
 
2.遺族代表のあいさつ
 会葬のお礼と、食事会の開会宣言のようなものをひとこと挨拶します。
「本日はお忙しい中、父の葬儀に(父の一周忌に)おこしいだだきましてありがとうございました。 父もこれで安心してくれたことと思います。
おかげさまで葬儀も(一周忌も)滞り無く済ませることができました。
これより、時間の許す限り皆さんと一緒に父を偲びたいと思います。まずはじめに父の友人である◯◯様にひとことお願いします。」
 
3.遺族代表が、献杯の言葉を依頼した人を紹介します。
 親族あるいは故人の友人の代表に、あらかじめ「献杯の言葉」を依頼しておきます。
 
4.「献杯の言葉」
 献杯の言葉を依頼された人は、故人との思い出などを、ごく簡単に語ります。
 
5.(この間、他の人は料理には箸をつけず、話を聞きます)
 
6.「献杯の発声」
 4.の言葉の最後に、おちついた声で静かに「献杯」と発声します。
杯は軽くあげるようにします。
 
7.唱和
 他の人も一斉に、静かな声で「献杯」と発声し、杯を軽く上にあげます。
杯を高くかかげることはしません。
また、近くの席の人と杯をチンと鳴らすのはNGです。
お酒を飲み干したあと拍手をすることもNGです。献杯ではお酒を飲み干す必要はありませんし、拍手もしません。
 
8.合掌
 黙とうをすることもあります。
 
7.食事
 施主が「それではどうぞお食事を召し上がって下さい」などと食事をすすめます。
一同、食事を始めます。
会話は 、故人の思い出を語り合うなど、静かに落ち着いて食事をしましょう。
 
8.施主の挨拶
 頃合いをみて、施主が会のお開きを告げます。
「皆様、本日はお忙しい中を最後までおつき合い下さいまして本当にありがとうございました。これにてお開きとさせて頂きたいと存じます。
どうかこれからも変わらぬご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
本日はまことにありがとうございました。 」
 
9.お開き 
項目流れとタイミング
4.ホテルを会場とする場合の法事・法要の一連の流れと献杯のタイミング
ホテルの場合は、読経をしない場合が大半です。
また、 他のお客様に配慮し(慶事のお客様や、ご旅行のお客様もおられますので)、焼香は行なわない場合がほとんどです。
焼香に代わり、献花または献灯がおこなわれます。
1.来賓入場
2.献花または献灯(献燈)
3.一同着席
4.開会宣言・開式の辞
5.施主の挨拶
6.献杯
7.法要膳(お食事によるおもてなし)
8.施主によるお礼の言葉
9.閉会宣言・閉会の辞

■2.献杯の挨拶・スピーチ例1(例文・文例・雛形)

 お葬式・葬儀や法事での献杯は、もともとお酒をささげるという意味です。
全員が同時に「献杯」と発声するために、一人が「献杯」という声を出したのを合図にして他の全員が「献杯」と唱和をします。
厳密に言えば、これだけで済むはずなのですが、故人の思い出などについて一言添えるというのが慣例となっています。長く話す必要はありません。短いコメントを述べ、言葉の最後に一呼吸おいて、「献杯」とつけます。
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葬儀のあとの献杯の挨拶例 (スピーチ例)

故人の友人の◯◯でございます。亡き友を偲び、献杯の辞を述べさせていただきます。ご唱和をお願いします。
このたびのことは突然のことで本当に驚いています。目を閉じると彼の笑顔だけが浮かんでまいります。 我々のことを今も見守ってくれているような気がしてなりません。◯◯くん、どうか安心して安らかに眠ってください。
それでは、これより献杯をさせて頂きます。献杯。
解説
・遺族以外が行う場合には冒頭で自己紹介=主に故人との関係を述べます(上記の例では故人の友人)
・冥福を祈る言葉を述べます。
・最後は「献杯」と静かに言います。

■3.献杯の挨拶・スピーチ例2(例文・文例・雛形)

 施主自身が献杯を行なう場合の一般的な文例です
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葬儀のあとの献杯の挨拶例 (スピーチ例)

本日はお忙しい中、最後までおつき合い頂きまして有難うございました。故人も安心してくれているものと思います。
この席では、私たち家族が知らなかった父の思い出話でもお聞かせいただければと思っております。
まずは、献杯をさせて頂きたいと思いますので、ご唱和をお願いします。献杯。
解説
・(上記の例では故人の子という設定)冒頭でお礼の言葉を述べます。
・最後は「献杯」と静かに言います。

■4.献杯の挨拶・スピーチ例3(例文・文例・雛形)

 法事の場合には、ごく親しい知人や親族だけの場合がほとんどです。四十九日を想定して、挨拶例をご紹介します
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法事のときの献杯の挨拶例 (スピーチ例)

故人の兄の◯◯でございます。本日はお集りいただきましてありがとうございました。弟を偲び、献杯をさせて頂きます。
本日で四十九日の忌明けでございます。私たち家族ががんばっているのを見て、弟もほっとしていることと思います。
それでは、これより献杯をさせて頂きます。献杯。
解説
・親族だけなら、自己紹介(故人との関係)を省いても良いでしょう。
・最後は「献杯」と静かに言います。

■5.献杯の挨拶・スピーチ例4(例文・文例・雛形)

 法事の場合には、ごく親しい知人や親族だけの場合がほとんどです。一周忌を想定して、挨拶例をご紹介します。
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法事のときの献杯の挨拶例 (スピーチ例)

故人の長男の◯◯でございます。
本日はお忙しい中お集りいただきましてありがとうございました。おかげさまで、無事に、一周忌の法要を終えることができました。
久しぶりに皆様にお会いできて、故人もよろこんでいることでしょう。
今日は故人の懐かしい思い出話でもお伺いできればと思っております。
まずは、献杯をさせて頂きたいと思いますので、ご唱和をお願いいします。献杯。
解説
・親族だけなら、自己紹介(故人との関係)を省いても良いでしょう。
・最後は「献杯」と静かに言います。